わかれびーさー
先日とは一転、北風が吹き荒れている。
旧暦3月はもう目の前であり、これはまさしく
わかれ(別れ)びーさー(寒さ)である。
さて先日おばあがタコを捕った際に、イギン(おばあは
イグンと発音するのでこれは久高での呼び名かおばあ個人
の癖なのか)の柄が折れてしまったとのこと、じゃー次の
大潮までに直しておくから、と預かっていたのだが・・・・
なんともう今日は大潮ではないか!
ということで朝いち修繕作業をしたのである。
イギン(イグン)とは、一本銛の先端、金属の部分が弧を描い
ている漁具のことで、イノーを歩きながらのタコ捕りに使われ、
自分としては非常に興味深い道具の一つである。
おばあとしては、移動の際は杖代わりにもなる。
それがタコを突いて挌闘しているうち長さ1メートルほどの木の
柄と先端部との接合部分が柄ごとボキッと折れてしまった。
タコはどうにかこうにか殺して捕らえてきたとうことだ。
私は、その折れた先端部を持ち帰り、金属の銛の部分と木性の
柄の部分とがどのように結合されているか想像をめぐらしたのだ。
なぜめぐらしたか、って柄の上からビニールテープでぐるぐると
巻かれてあって構造が見えない。じゃあ剥がせばいいじゃないか、
となるのだが、それでは面白くない。
ゆえに私は想像したのである。
たぶん、最もシンプルなやりかただろう。
で頭の中で修繕を試みて、多分、このやりかただろう、
というところに行きついた。
というのを経ての、今朝である。
ぐるぐる巻きのビニールテープを剥がすと・・・・
おおー、ほとんどイメージ通りではないか。
しかし針金の巻き方がほんとうに必要最小限で、
なるほどなあ~・・・と感心してしまったのだ。
それでまあ、造りが分かったので箒の柄なんか
使って、小一時間ばかしでおわらせ、
仕上げに補強のために新たなビニールテープを
ぐるぐる巻いて、届けてきたのである。
おそらくは、造形というものは、扱う人間は多々あれど
突き詰めてゆけば段々と無駄のない一つの「型」に収斂
されてゆくのだと思う。それは機能美とも言えるかもしれない。
少なくとも、いつのころかこのイグンを直すか作った人の
接合のしかたと、私が想像したのとは、ほぼ、おんなじ
であった。
(ほぼ、というのは針金の巻き方が少し違い、
これはその方と私の経験の差が出たといえよう)。
私が昔からある道具に興味を持つのをわかっていただける
だろうか。
材質でいえば、鉄と木、である。
いたってシンプルである。