盛夏
ブログの内容は展示会を控えていることもあり、
創作活動に特化しているところもあるが、
一瞬だけ横道に外れてみようと思う。
僕は、「義務教育」のなかで最も大事な、
教科とも言えるものは
自由研究だと思っている。
僕の母は、長年、幼稚園の教諭をしていた。
いまでもよく覚えているのだが、僕が小学校1年生のころ
夏休み、宿題の一つである、「夏休みの自由研究」に取り組む
にあたり、当時、学研(と記憶している)から出ていた、
かがくとがくしゅう、といったような冊子を参考に、マニュアル的な
自由研究を進めていたところ、母はそれをみて、僕にこう言った。
「いやあ、そうじゃない、そんなことをするんじゃなくて、紀和、地図をかこう。」
そして僕の自由研究は、僕の住んでいる、戸数10戸余りの
小さな集落を、模造紙とクレヨンを使って絵地図を作製する、ということになった。
さらに、言葉は大袈裟だが、「人口統計」に近いものもやった。
大人何人、子供何人、飼っている犬、猫の数、ヤギも一匹居た。
クレヨンで色を塗りこむ作業は母との共同作業であった。
結果として、夏休み明けの新学期、学年を代表して、全校生徒の前で
研究発表をしたのだが、これは結果論。
ついでに言えば2年生のときの自由研究は、「コロッケをつくる」、で
これも母の発案であった。これもまた、全校生徒の前で発表(レシピなど)することに
なる、がこれも結果論である。
それよりも、僕は、このような柔軟な発想と、多くの引き出しを持った
我が母に対し、感謝とともに尊敬の念を感じている。
これもまあ、結果としてそうなったのだと思うが、
巡りに巡り巡って、僕はこの島にあって、
入念に地名調査をした地図を作製し(僕の中ではこれは継続中)、
イラブー(エラブウミヘビ)の調理手順を、実際に自ら作りながら
文章とイラストで纏め上げる、というのを数年前に行っている。
自由研究、とは、読んで字のごとく、各自、自由にテーマを決めて
研究を進めることである。
そして世間に発表する。
たかだか夏休みの宿題と思うなかれ、僕はこれが義務教育の
最たるものだと思う。
ちなみに、僕が中学の時の自由研究では
地元の物好きな電気屋さんの協力のもと、
5分足らずのクレイアニメを制作した。
これは自らの発案である。
そういう息子に育て上げた母は、
やはり偉大である。