宛名のない手紙
拝啓、南の島より、これから皆様に、
不定期ではありますが、ささやかながらにお便りを、
お届けしようと思います。
創作活動とは、宛名のない手紙を送り続ける
ことだ、とあるとき言われたことがあります。
僕は当時、
それを聞いて、ひどく寂しい気持ちになりました。
全身にひろがる徒労感。
終わりの見えない道のりに、
気が遠くなりました。
あれから月日は流れ流れて僕はいま、
この島に両の足をつけ、絵をえがくという
作業を続けています。
僕はかつて、筆を持てども絵が描けない日々を送っていました。
それがどういうわけか、今は図案は次々浮かび、
図案を具現化するために黙々と作業を進めるているだげであり、
産みの苦しみというものは皆無です。
何故そこに至ったのかは今後の考察を待たねばなりませんが、
ひとつ言えることは、
絵を「描く」、から
「描かされる」というスタンスになった、ということです。
ある時点から、僕はそうなった。
それからというもの、いかに「描かされる」か、に
重きを置いてきました。
絵というのは、描くものではないのです。
人智を超えた大いなる意思の力が
僕の体を活用して、世に現したいものを具現化している・・・・
それは終わりも始まりもない永遠の旅路。
今、僕は、このようにして創作活動を続けています。
何故だかふいに、あのときの言葉が蘇る。
僕は、以前のような孤独感や徒労感に苛まれているだろうか?
自分で自分に問うてみようと、会いに行ったのです。
まばゆい南国の空の下。
活き活きと、無心に作業している
自分自身が、立っていました。
後ろ姿が静かに、問いかけに
答えていました。
僕はそれを見て、体のなかから喜びが
静かに湧いてくるのを感じました。
もはや寂しさも徒労感も抱くこと無く、
黙々と描き続けている自分がそこにいたのです。