2025-03-31
旧暦3/3 浜下り(はまおり)

旧暦3/3 浜下り(はまおり)
雨の合間に小一時間ほど、浜に繰り出した
のでした。
沖縄に立つ前の晩、池袋の路地の居酒屋で
ご馳走になった。その方は小さいながら
劇団を主宰されていて、そんなわけで経済的
には決して余裕があったわけではなかったと
おもう。いろいろ話しをして、店を出て、
じゃあ、と別れ際に、「あ!そうそう」と
劇団のひとらしからぬぎこちなさを出しながら
ズボンのポケットに手を入れた。
ポケットから出された手のなかから、細かく
折りたたまれた1万札。それを広げながら
「山崎さん、にっちもさっちもいかなくなったら
とりあえず、東京まで、これで、足りなかったら
これに少し足して、戻ってきてください。
東京からは、僕がなんとかします。」と言って
渡してきたのだ。
20年近く前のはなし。
不覚にも僕は涙してしまった。そのあと
固く握手をしたのか、抱擁をしたのか、
よく思い出せない。
沖縄は自分にとって、行ったことのない
未知の世界であった。たぶん、その方も
ほとんど未知に近い世界だったのだろうと
思う。
僕よりひとまわりほど年が上のかた
なので、いまはもう還暦近いかもしれない。
僕はこの方のこのときの気持ちに答えたい、
と思っている。
腕の先の筆の先から様々なものが、キャンバス
に注がれているのだというはなし。