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2025-02-16

春のしらせ

春のしらせ

夜道を歩いていると、暗い路上に
細長いものがうごめいている。
産まれてまもないであろうイラブー
が、地上で迷っているのである。
海にかえそうと首根っこをつかみ
最寄りの浜に向かう。
波打ち際に投げるも、なかなか
海に向かっていかない。
結局、しびれを切らして直接、
波の中に投げ入れると、そのまま
闇えと消えていった。もしかしたら
洞窟の、人も、人の手も入らない
くらいの奥の隙間で産まれた者に
とって「海」というものが
初めてであったのかもしれない。
ほっといたら路上で、車にひかれるか
野良猫にやられるかしてただろうから、
少々荒っぽかったが、これで
よかったのだろう。
ともあれ、イラブーの子供が
地上に現れる時期になった。